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第3部で取り上げる曲について –イメージと導入-

平成15417  E9917  獅子谷

(明石高専電気系5, shishitani☆ezweb.ne.jp)

(edition: b1)


1.            はじめに

この文書では、第1回定期演奏会・第3部で取りあげる曲目について、そのイメージをつかむことを目的に解説を述べています。

このステージでは、全曲ベルト・アッペルモント(Bert Appermont)の作品を取り上げており、またその作品は人物や物語を題材に描かれたものを選曲しています。楽曲のベースの題材を理解して演奏することは、非常に重要なことです。このペーパーでは最低限の基礎知識に的を絞り、背景を紹介しています。

 

2.            読み方について

誰がなんと言おうと、基本的に次のように読むこととします。本文中では岩波文庫と整合を取るためにことなる表現をしている場合もありますが

-     Absalon アプサロン

-     Gulliver’s Travel ガリヴァー旅行記

-     Ivanhoe アイヴァノー

あと、やっぱり各自できちんと物語を理解してほしいし、イメージを持って欲しいので全員必ずガリバー旅行記・アイヴァンホーは読んでください。

 

3.            “Bert Appermont”

“Bert Appermont”(ベルト・アッペルモント)は、いま最も注目を浴びている若手作曲家の1人です。彼は1973年、ベルギーのブルツェンに生まれました。当初、ベルギーのレマンス音楽院でJan Van der Roost(ヤン=ヴァンデル・ロースト)に作曲を師事した。その後イギリスに留学し、ボーンマウス・メディア・スクールから1998年に”映画とテレビの音楽デザイン” で修士号を取得した。

彼の作品にはヨーロッパらしい雰囲気と、Roostゆずりの民族的なリズムが感じられる特徴がある。また、ベルギーらしく、吹奏楽以外にファンファーレバンドやブラスバンドにも作品を書いている。

彼の代表作には、「ノアの方舟(Noah’s Ark)」「コンサート・マーチ レオネス(LEONESS )」「アブサロン(Absalon)」「ガリバー旅行記(Gulliver’s Travel)」「アイヴァンホー(Ivanhoe)」などがある。

最近の作品・活動として、吹奏楽によるミュージカル「サタンの種(ZAAD van SATAN)」、F.Baelenとの共同作品「アリババの伝説(The legend of the Ali-baba)」「冒険(The quest)」などが挙げられる。なお、最新作はサタンの種を題材にした「サガ・キャンディダ(Saga Candida)」である。

 

4.            “Absalon”

“Absalon”(アプサロン)とは、12世紀に実在した人物である。ドイツの北にあたるスカンジナビア半島にデンマークがある。この国の現在の首都・コペンハーゲンを開拓した人物がアプサロンである。

アプサロンは1128年、ロスキレにて生まれました。国王がヴァルデマール1世となった1158年、アプサロンはロスキレの大司教となり、彼はスカンジナビア世界の異教と、海賊の根絶のために熱心に取り組みました。1167年、海賊根絶の拠点としてロスキレの東に要塞を築き、これがコペンハーゲンのはじまりです。彼は1184年にポメラニアの公爵に対する海軍の勝利を勝ち取りました。

アプサロンは自身の熱意と、彼の勝利に対する王からの敬意を受け、教会と僧院を構築し、学校を設立し、文明と啓発を促進するために最善を尽くしました。

1201年3月21日、アプサロンは亡くなり、贅沢に飾られ僧院にて眠りに就きました。

この曲はアプサロンの生涯と、コペンハーゲンの歴史を描いた曲で、冒頭の静かな導入は未開のコペンハーゲンを表し、そこから発展、戦乱、平和への時代の推移を脈動的に描いている。

副題に”to Jan Van der Roost”とあるように、この曲は師であるヴァンデルローストに捧げられたものです。

 

5.            “Gulliver’s Travel”

“Gulliver’s Travel(ガリヴァー旅行記)”は、JonathanSwift(ジョナサン・スウィフト)(1667-1745)により1726年に書かれた小説である。スウィフトはアイルランドのダブリンに1667年に生まれた。彼の生涯を要約すれば、司祭として活躍や正負に対する弾劾文の発表、ガリバー旅行記を刊行し著名となったのち、晩年は狂人となり78年の生涯を閉じた。

ガリバーは船乗りとも冒険家とも言える人物で、自身の好奇心ゆえに家族の心配をよそに何度漂流しても船乗りとして出て行く。その漂着した不思議な国々の様子を「旅行記」としてまとめたものがこの本で、それぞれの国の文化・人との出会い、ガリバー自信の思想の変化が描かれている。この旅行記は4章の本編と2片の短文から成っており、楽曲では本編4章を題材にしていて、それぞれ楽曲のIIVに対応する。

第一篇・リリパット国渡航記では、小人の国へと漂着した様子が描かれている。船が嵐に遭い難破したのち、気を失ったガリバーはある島に漂着する。気づいて起き上がろうとすると起き上がれない。見回せば背丈6インチほどの小人に取り囲まれており、自信は地面に縛りつけられている。抵抗しようとすればチクチクと小さな矢を射られる。その後軟禁状態のままガリバーの家が与えられ、食事も提供される。

この章はよく絵本などで取り上げられておりなじみ深い話である。

第二篇・ブロブディナング国渡航記では、巨人の国へと漂着した様子が描かれている。船は嵐に遭い、大きく流されてしまった。見張りの少年が陸地を発見し、とりあえずそこに上陸することにした。その陸地を探検していると、巨人と遭遇する。これはまずいと逃げ回るガリバーだが、どうも逃げられないので素直に降参し、ある農家の大地主に引き取られることになる。 欲深い男のために見せ物として連れ回されることになる。散々金取りに連れ回され踊らされた挙げ句、いかにも死ぬ前のようにやせ細ったとき、この国の皇帝と接見し、そこに引き取られることとなる。

第三篇・「ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブ、および日本への渡航記」は、楽曲ではこのうち、「ラピュータ(浮き島)」のみが取り上げられている。ここではラピュータのみ触れる。

ある船の雇われ船長を頼まれて出航したガリバーは海賊に遭遇し、根こそぎ剥がれた上に海に放り出される。ようやく島に漂着し、数日ごとに島を転々としながら暮らしていくガリバーの前に突然浮き島が現われ、そこに乗り込むことになる。この島の文化は「音楽と数学」に長けていて、それ以外の分野はさっぱりである。食べ物はみな楽器の形や幾何学的な形をしていて、音楽をとても好む。数学は非常に高度な技術を持っているのだが、それを実用に応用することは悪だと考えられている。たとえば、家はガタガタに傾いているし、紙の上の思想に長けている裏返しに戦乱の不安に常におびえている。

第三篇では「日本」が登場するが、これは全篇通して唯一の実在する国である。歴史家の中にはこのことを題材にし、当時のイギリスの日本観などをさぐり論文にまとめているものがある。

第四篇・フウイヌム国渡航記では、ガリバーは船員の裏切りにより見知らぬ土地に放り出されてしまう。ここに住むのは「ヤフー」と呼ばれる人間に似た珍獣と、「フウイヌム」と呼ばれる馬である。この国を支配しているフウイヌムは、現地の言葉で「自然の最高傑作」という意味をもつらしい。ガリバーはフウイヌムとの対話の中で人間の有り方、特に戦乱や食料の自給について大きな影響を受け、果たして人間は最もすばらしいものなのかという疑問へとたどり着く。

これら4篇に「ガリヴァー船長より従兄シンプソンへ宛てた書簡」「出版社より読者へ」が加わり、ガリバー旅行記の全編となる。この2つの短編により、さも実在するガリヴァー氏が自らの体験をつづった旅行記を出版したかのように読者に読ませている。

楽曲を演奏する際の参考としては、各篇全体を把握することよりも、その篇で訪れている世界はどのような世界かということのイメージを膨らませることが重要だと思われます。

 

6.            “Ivanhoe”

“Ivanhoe(アイヴァンホー)”Walter Scott(ウォルタ・スコット)(1771-1832)により1819年に書かれた小説である。スコットは1771年にエディンバラ生まれ、両親ともに神話や民話の多い、イングランドとスコットランドの接した地域の出身であり、その影響を受けたスコットも非常に民話・神話の知識に長けていた。

アイヴァンホーは、”Sir Willfred of Ivanhoe(アイヴァンホーの騎士ウィルフレッド)”というのが正しい呼びであるが、通常「アイヴァンホー」と呼ばれる。

この物語は史実・神話・民話・空想を行き来する壮大な物語である。この話は何度呼んでもよく理解できないので、あらすじを引用して解説を逃げる。

アイヴァンホーの騎士ウィルフレッドはアルフレッド大王の血を引くロウィーナ姫に恋したために、サクソン王家復興の念願を抱く父セドリックに勘当される。そして獅子王リチャード率いる十字軍遠征に加わるが、王はオーストリアに幽閉されウィルフレッドの行方も知れず、その間に王弟ジョンによる王権奪取がもくろまれていた。

そんなある日、騎馬試合が催される。王弟ジョンは御堂の騎士ブリアン・ド・ボア・ギルベールらノルマンの騎士の技によって自らの威光をサクソン人に見せつけようとしている。しかし、「勘当の騎士」と名乗る騎士により、ノルマンの騎士たちは次々に打ち倒されていった。翌日の試合で彼は集中攻撃を受け危機に陥るが、「黒いのらくら者」と呼ばれる騎士の助太刀で敵を撃破する。そして、「勘当の騎士」の正体はウィルフレッドであることが明らかになる。

試合で深い傷を追った彼は、ユダヤ人アイザックとその娘レベッカに助けられる。親子は重傷のウィルフレッドを移動させる途中でセドリックらの一行と出会うが、ちょうどその時、ボア・ギルベールらによって拉致され、一行はともに城に監禁されることになる。

一方、密かに帰国していた獅子王リチャードは、「黒いのらくら者」として姿を隠していた。事情を知った王は、森の首領ロビン・フッドらとともに城を攻めて人質を救出するが、レベッカだけはその美しさに目をつけたボア・ギルベールによって連れ去られてしまう。しかし彼の思惑に反してレベッカは御堂の騎士団長によって宗教裁判にかけられる。そこに、まだ傷の言えるウィルフレッドと獅子王リチャードが駆けつける

楽曲は次の3部分から成り立っている。3曲という位置付けではなく、あくまで1曲の中に3つのテーマがあり、それが連続して演奏されるように書かれている。

I.               Code of Chivalry …「騎士道の掟」

II.         Loyalty or Love? …「忠誠か愛か?

III.   Battle & Finale … 「戦いと結末」

なお、副題である”dedicated to “De Ware Vrienden”, Bommershoven”とは、…???

 

7.            “Solemnity”

“Solemnity”とは「荘厳」「厳粛」、副題の”hymn”は「賛美歌」という意味です。この曲はアンコール(1曲目)といて用いるつもりです。

この曲の作曲者”Robert Finn””Bert Appermont”で、名前は違いますが同一人物です(詳しいことは知りません)

 

8.            結言

この資料がアッペルモント作品の理解や小説への興味を導く力になりましたならとても幸いです。

資料を引用させていただきました各著者のみなさま、 “Ivanhoe”CDを貸してくださいました府立高専の曽根祥弘さま、Absalonについて助言をくださいました岐阜高専の纐纈英典さまに、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

 

参考文献

-        Beriato music webpage(English).

http://www.beriato.com/

-        Band Power webpage

  http://www.band-p.co.jp/

-        秋山紀夫, “New Wind Repertoire 2001(曲目解説)”, Brain music, (2001).

-        秋山紀夫, “New Wind Repertoire 2002(曲目解説)”, Brain music, (2002).

-        獅子谷卓, “Absalon –曲解説とイメージ”, (2003).

http://www.pure.ne.jp/~e9917/windband/absalon/

-        スウィフト/平井正穂, “ガリバー旅行記”, 岩波文庫, (1980).

-        スコット/菊地武一, “アイヴァンホー()()”, 岩波文庫, (1974).

-        http://dmi.vis.ne.jp/works/england/219-1.html

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